#62 一番やりたいこと2023年06月12日

(前回からの続きです)

当院の運営顧問で幼馴染のA君が余命5ヶ月と言われてマル5ヶ月が経ちました。

担当医は『5ヶ月もちましたね。では、もう5ヶ月を目標にがんばりましょう』と、のたまう。

彼のように、ステージ4の肺癌で5年以上生存できる人は5%ほど。以前申し上げましたウチの患者さんでA君と同じ状況の方が11年生存されました。

A君は言います。

「誰かが言ってたで。『あと7日しか生きられへんかったら、その7日間、あなたは何をする?』

俺の場合、あと5ヶ月で死ぬって聞いたから、その5ヶ月間、一番したいことやろうと。

ほんで『俺が一番したいことは何や?』と自分に聞いたらコンサルやった」

彼は総合コンサルタント会社の社長。まだ元気に仕事を続けてます。もし突然彼が倒れても、優柔なスタッフにめぐまれ、会社運営やお客さんには支障を来さない。

A君は抗癌剤治療など、西洋医学の粋(すい)を集めたものを色々行い、一定の効果があったにも関わらず、主治医に失礼がないように、中止する方向で考えています。

あたし
「なんでやめるん? まだそれで、もっと長く生きれるかもしれんのに」

A君
「いろんなことやって、もうワクワクしなくなった。飽きた。次は東洋医学や。漢方薬で俺がどうなっていくか、ワクワクしてきた」

かつてウチの治療を論理的に拒否したA君(No.57参照)。とうとうウチの出番がまいりました。飽きさせないよう、精一杯させていただきます。

A君は言います。

「俺が死んだら、質の良い墓石に『最後までワクワクしてた男、ここに眠る』と書いてくれ。結構お金かかるけど、香典代わりや」

高い香典やな。

でも、幼稚園時代からのご意見番。60有余年のコンサル代や。

まぁ、ええか。

あたしの経験上、いっつも本心でワクワクしてる人は長生きする。たぶん免疫が安定するんやろね。

A君は東洋医学をしなくても長生きする気がする。でもあたしは悪魔ですから『東洋医学で長生きできた!』とウチの宣伝に使うんだろうな。きっと。(了)
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肺癌シリーズは今回で一旦終了です。折に触れA君の安否はお伝えする所存です。なんか、あたしより長生きしそうな気がします。

次回のお手紙は6月26日(月)からお配りする予定です。

#61 ワクワクの放射線治療2023年05月29日

(前回からの続きです。当院運営顧問のA君のお話)

肺癌ステージ4、余命5ヶ月のA君から電話がありました。今回も上機嫌。

『どうしたん?』

A君
「聞いてや。今度、放射線の治療うけることになってん」

あたし
「え? 放射線使ったら間質性肺炎が悪化して1ヶ月で死ぬから出来ないってゆうてたやん」

A君
「確かにそうや。肺には使われへん。転移した仙骨の癌に使うんや。さっき、放射線医師のレク(説明)受けて来てん。それがや、その放射線の機械、むっちゃカッコええねん。あれ受けたら、どんな感じするんやろ。ワクワクやで」

あたし
「ずっと黙ってたけど、お前、癌やねんで! 余命5ヶ月やねんで! ええかげんにしなさい。思考が狂ってるぞ。まさか癌は脳にも転移しとるんか!」

A君
「そやねん。その放射線の機械な、脳に転移した癌もプシューってピンポイントで狙うそうや。むっちゃカッコええと思わへん?」

あかん。コイツあたしの言った意味がわかってへん。

昔A君と東京のお台場に行った時、高さ18メートルのガンダムを見て

『むっちゃ、カッコええやん。ワクワクやで』

と、はしゃいでその場を離れず、会合に遅刻したことを思い出した。今の彼は気に入ったおもちゃを買ってもらった子供みたい。

A君
「聞いて、聞いて。10日連続でやるんやて。10日やで、10日!」

このお手紙を読んだ殆どの方は『余命5ヶ月と宣告され、その恐怖から逃れたい一心で ”ワクワク” なんて無理に強がってるのだろうな、かわいそうに』と思うでしょう。

以前申しました。A君は幼稚園からの友人。彼は心から “はしゃいで” いる。彼に当院の運営顧問をお願いしたのは、プラス思考という机上論の誤魔化しでなく『達観』してるから。

あたしの人生の難問に数々の意見をくれ、乗り切ってこれたのも彼のおかげ。

あたし
「ほんで、癌はどうなるの?」

A君
「ま、なんとかなるやろ」

・・・・・・・・・・『 マ ナントカ ナルヤロ 』

このA君の口癖に、

あたしはずっと救われてきたのですけど・・・・・・(つづく)

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60年前の幼少期、母親と幼稚園の見学に行き、あたしのすぐそばで

「あの滑り台、大きくてワクワクや!」

と大声で叫んでたA君を思い出しました。

次回のお手紙は6/12予定。

#60 ワクワク抗癌剤の副作用2023年05月15日

(前回からの続きです)
肺癌ステージ4、余命5ヶ月のA君から電話がありました。前回とは打って変わって今回はいたって上機嫌。 『どうや調子は?』

A君
「やっと、副作用らしきものが出てきよった。ワクワクやで」

あたし
「え? どうしたん?」

A君
「抗癌剤3回目から毛が抜けてきたのよ。やったー!っていう感じ」

あたし
「はあ?  ・・・・ほんで?」

A君
「あまりに毛が抜けて、リビング・風呂場・トイレ・洗面台・廊下・寝床に髪の毛いっぱい転がっとるから嫁ハンから

『丸坊主にしておいで。』

と言われたんよ」

あたし
「お前の嫁ハン、丸坊主は、反対してたやん?」

A君
「まぁ、あんだけ髪の毛が散らかってたら掃除が大変やからな。彼女も降参や」

彼は頭を丸め、さっそく購入した作務衣を着て自宅リビングで、あたしに披露。

むっちゃカッコええ!

まさしく道(TAO)を求める修行僧! 

感動や! 

あたしもやってみたい!

感動したあたしはTAOを求める修行僧に変身するべく、頭を丸め、作務衣を購入。彼と同じ様に2月から職場でも活用している。患者さんからは

「どしたん? そー爺ぃ、その格好!」

「はい、禅寺でお世話になってます」←コレ真面目なお話ね。

禅寺と言えば内観(ぼーっとした半分無意識の状態で自分のこころの中を観察する)と言って、座禅が有名です。

私の場合、ぼーっとではなく、シャキーンと覚醒した状態での問答に興味があって、住職(あたしは先生と呼んでいる)や修行僧の方々と問答。

『科学者気どってるけど、そろそろ本格的に机上論から脱皮する時期なんちゃう?』

作務衣のA君はニヤニヤしながら自宅リビングであたしに意見する。勿論タバコをくゆらせながら。

『おい! お前、肺癌なんやで!』

なんてヤボなことは言いません。

あたしの禅寺通いは、またの機会にご紹介するとして、次回はA君の放射線治療について。

え? 間質性肺炎がある彼は、放射線治療は出来ないのと違った?(つづく)

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余談

5月初旬、A君とスラムダンク劇場版を見に行きました。全体のストーリーご存知ない方には退屈な映画です。

あたしたち?

始まってから最後まで2人で涙涙の鑑賞。

終わってから彼の自宅で『俺ら涙腺ゆるくなったなぁ』と言いながら今回カットされ出て来なかったシーンも含め回想。

気がつくと午前2時。あかんやん。

次回は5月29日に配信予定です。

#59 抗癌剤2回目。ホンマに効いてる?2023年05月01日

(前回からの続きです。初めて読んで頂く方のために今までの流れを説明します)

昨年の暮れ、幼馴染で当院の運営顧問でもあるA君に肺癌が発覚。余命は5ヶ月。

肺癌にはいろんな治療法があるが、間質性肺炎があるA君に使える治療法は限られる。

彼に『漢方薬も飲んだらどうか』と勧めたがA君は論理的に拒否。(No.57参照)

A君曰く『抗癌剤は殺人兵器』

能天気な彼でしたが、さすがに生まれて初めての抗癌剤は入院して慎重に行った。副作用は出ず、元気 はつらつ。

A君はこの結果に不満で、『副作用が無いということは主作用もない。抗癌剤効いてへんやん!』

主治医は『今後、何回も続けるうちに必ず副作用は出ますから』と言う。毛が抜けてくるらしい。

A君は毛が抜けたら頭を丸め、作務衣(さむえ)を着て仕事をする。修行僧の格好が憧れだと、ワクワクしながら抜け毛を待ってる。

彼はA総合研究所の社長。

A君の場合、2回目以降は通院による抗癌剤投与。毎週するらしい。抗癌剤投与の前に毎回血液検査。問題なければ次の抗癌剤を行う。

彼は検査結果を写メしてラインで送って来た。個人情報をラインで送るなんて、まぁ、本人が送るんやから、ええか。

検査結果は、まったく問題なし。すぐ2回目の投与は開始されました。

数日後、A君に連絡すると、すごく機嫌がわるい。『どうしたん?』

A君
「なぁ、どう思う? おかしいやん。全然副作用が出ぇ〜へん。支払いの明細書見たら、抗癌剤9万円や。 へ?  あの1時間で9万円? うそやろ! 痛くも痒くも何とも無い。俺より高いのに、なんやねんこれ!」

A君のコンサルタント料は1時間6万円。

抗癌剤が9万円でも保険で3割負担だから窓口の支払いは3万円で済む。しかし実際は1時間9万円の抗癌剤。これにカチンと来たようです。

『9万円も価値ある薬やのに、なんで痛くも痒くもないんや!』

主治医は『まぁ、そのうち、必ず副作用はでますから・・・』とA君をなだめる。

A君
「毛が抜けたら作務衣を着るんや。俺、職場でそれ着て坊さんの風格で仕事するんや。ワクワクしてんのに全然その気配ないやん。俺のワクワク台無しや!」

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『やっぱり、コイツの脳にはすでに癌は転移してるな。思考が狂っとる』と今回も思いましたが、あまりに機嫌が悪いので、何も言いませんでしたよ。(つづく)

#58 抗癌剤ホンマに効いてる? 23.4.172023年04月17日

(前回からの続きです。今までの流れをまとめます)

昨年の暮れ、あたしの幼馴染(おさななじみ)A君は、友人Bの勧めで人間ドックに行き、肺癌が発覚。余命は5ヶ月と言われた。

肺癌にはいろんな治療法があるが、間質性肺炎があるA君に使える治療法は限られる。

A君に『漢方薬も飲んだらどうか』 と勧めたが彼は論理的に拒否。抗癌剤だけで治療が始まった。(No.57参照)

さて、

1回目の抗癌剤は入院して行いました。A君が言うには抗癌剤は殺人兵器らしい。なぜなら患者の体内で作られる細胞を殺すから。

癌細胞は敵だと言われます。でも、その敵を作っているのは誰?

そうA君自身。癌細胞はA君にとっては実は仲間だと言う。

『自分の仲間を殺すんやから、しんどくなるのは当たり前やん』

と彼は言います。

1回目の抗癌剤は点滴で投与されました。点滴の液が何かの間違いで皮膚に触れたら、たちまち皮膚炎を起こしケロイドになる時もある。

ですから絶対漏らさないよう慎重に血管の中に流します。点滴中に異常がないか看護師たちは何回も慎重にチエックします。

数日後、あたしは入院中のA君に連絡しました。

あたし
「どうや? しんどくないか?」

A君
「それがな、全然しんどくないねん。吐き気とか食欲不振とか疲労感とか、いろんな副作用出るハズなんやけど、『元気 “はつらつ” オロナミンC』や。お腹も空いて病院食では足らんから、病院のコンビニで弁当買って食べてる」

あたし
「へぇ〜、良かったやん。よく患者さんから抗癌剤した後は、『むっちゃ疲れてゲロゲロになる』と聞くで。お前、ラッキーやな」

A君
「お前はアホやな。相変わらず短絡や。そんなんでクリニック経営してるんか? つぶれるで」

当院の運営コンサルタントA君は相変わらず手厳しい。

あたし「え?」

A君
「副作用の反対は何や? 主作用やろ。副作用が出ないとゆうことは、主作用がない。つまり今回の抗癌剤は俺には効いてないということやん。

主治医にそう言うたら『今後2回、3回と繰り返すウチに副作用は必ず出ます』といいよる。毛が抜けるんやて。人生初めての抜け毛や。それ聞いたら、ワクワクするやん」

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彼は、明らかに狂っとる。『きっと脳にも癌が転移して、思考がおかしくなってるんや』と、あたしは密かに思いました。勿論、彼には言いませんよ。次回は5月1日配信予定。      (つづく)

#57 23_4_3 肺癌のA君、漢方拒否2023年04月03日


(前回からの続きです)

あたしの幼馴染(おさななじみ)で当院の運営コンサルタントA君の肺に影がみつかった。細胞検査で肺癌が確定。転移がありステージ4のかなりヤバい肺癌。

手術は不可能で余命は5ヶ月。肺癌は進行が早いので、すぐ抗癌剤治療の準備が進みました。

あたし
「なぁ、A君。漢方薬も飲んでみたらどないや?」

A君
「そうやな〜。お前の所では、数々の奇跡を起こしてるからそれもありやな。3ヶ月の命と言われた肺癌の人が11年も生きたことがあったと言うてたな」

あたし
「やろ? ウチの診察受けてや」

A君
「ありがとう。でもな、その人は抗癌剤やって、しんどくて、癌の進行を止められず、医者に『何もすることがない』と言われたから来たんやろ?」

あたし
「そうや」

A君
「俺、まだこれから抗癌剤始めるんや。効くとか効けへんとか、わかれへん。主治医も『本当はわかれへん』と、正直に言うてくれた。

間質性肺炎という爆弾もかかえとる。漢方薬飲んで間質性肺炎が悪化して死んだ人もおるわな」

あたし
「そうや。しゃ〜から、あたしらも常に緊張しながら処方しとる。患者さんは心配せんでもええけど、あたしらは、むっちゃシビアに緊張しながらやっとる」

A君
「やろ? ほんでや。俺が間質性肺炎が悪化して、エクモとか使って、たまたまラッキーに生きてたとしよか。

ほんで、俺は漢方薬と抗癌剤を一緒にやってたとする。

俺の主治医は抗癌剤が原因やと考え投与を中止する。一方、お前のところは漢方薬が原因やと考え投与を中止する」

あたし
「そうや、何かあったら『自分が悪い、自分が原因』と思って緊張しながら責任もって診察しとる。当たり前や。医者はみんなそうや」

A君
「やろ? 両方中止や。ほんなら・・・、俺の癌治療は誰がするねん!」

A君は論理的にあたしを嗜(たしな)めた。ご意見番のA君にはかなわない。

あたし
「でも、お前は『抗癌剤なんてあかん』ってずっとゆうてたやん」

A君
「そうや、言うてた。俺の知合いが抗癌剤でボロボロになるのを見て来たから。癌といえど自分が体内で作った自分の細胞を殺すんやで。殺人兵器や。でもな『俺が抗癌剤やったら、どうなるんやろ』っていう興味でワクワクなんよ」

こいつ・・・・・、いっつもそうや。アタマん中、ぶっ飛んどる。

(つづく)

#56 23_3_20 友人A君の余命は5ヶ月2023年03月20日

(前回からの続きです)

あたしの友人A君の肺に影が見つかった。どうも肺癌が疑われる。精査するためにA君の友人Bは、かつて勤務したことがある病院の呼吸器外科にA君を紹介した。

肺癌は進行が早いので急ぐ。レントゲン・MRI・血液検査・心電図・肺機能検査・造影剤を使った脳のCT、そしてPET(ペット)と一気に検査を済ませた。

結果・・・・・

外科医師
「Aさん。画像のデータを見る限り肺癌ですね。幸いまだ脳には転移してませんが、腰と仙骨周辺に転移してます。しかも間質性肺炎も疑われる。肺気腫もあります。

もうAさんの肺はボコボコですよ。タバコ? すぐ止めてください。タバコは怖いですよ。タバコはナメたらあきません!ナメたら!」

A君
「先生、タバコはナメるものではなく。吸うものです」

外科医師
「・・・・(汗) この癌はステージ4の位置にあり手術不可能です。呼吸器内科を紹介しますから診察と検査・治療をうけてください」

A君は呼吸器内科を受診。入院して細胞検査。数日後、癌と確定診断されました。

内科医師
「外科の先生からお聞きかと思いますが、癌の転移があり手術は不可能です。ステージ4です。抗癌剤治療が必要です。

ただ、抗癌剤は癌の進行を止めるのが目的で、治すものではありません。今は余命5ヶ月と申し上げます」

A君
「抗癌剤しか方法はないのですか?」

内科医師
「放射線治療とか、他にもいろいろあるのですが、間質性肺炎が疑われて使えないのです。

それらの治療をして、かえって間質性肺炎が悪化する場合があり、その時は一気に肺が真っ白になって1ヶ月で死ぬ場合があります」

診察室から出て来たA君に「どうやった?」と聞きましたら

A君
「余命5ヶ月やて。抗癌剤治療するんやて。人生初めての体験がまた1つや。ワクワクやん。俺が抗癌剤したら、どんな感じになるんやろ。キャー、おもしろそう」

自身の余命5ヶ月宣告より、初めての体験にワクワクするA君。こんな調子でずっとあたしのピンチを救ってくれた彼ですが、なぁA君、今度は君がピンチなんやで。(つづく)

2023.03.06 #55 幼馴染(おさななじみ)の肺癌2023年03月06日

あたしには、いつも相談にのってくれる60年来の幼馴染(おさななじみ)、A君がいる。あたしだって相談したいことがあるんよ。

彼の意見はいつもあたしを震わせる。感動するんよね。

幼稚園で好きな子ができた時、進学の時、クリニックを始める時、運営に困った時。

あたしのあらゆる相談を引き受けてくれたA君。そんなA君が肺癌になった。

年末のある日、A君は友人Bから大腸検査と胃カメラを勧められた。A君は今まで病院のお世話になったことがない。健康そのもの。友人B曰く

「え〜〜〜? 60歳超えてるのに1回も検査したことないんかぁ? そりゃあかんで、俺なんか50歳過ぎてから毎年やってる。早期発見せんとあかんやん」

A君は友人Bが手配してくれた病院で検査をした。

大腸ファイバー・胃カメラ・レントゲン。モノはついでと、CT・MRI・エコー・血液・尿検査などなど、入院して一気に行った。市民検診の超豪華バージョンやね。友人Bは、

「よかったなぁ、胃も大腸も問題なしやって。あははは。ところで、お前の肺や。真っ黒クロスケやん。裏で見せてもろたら授業で習った最悪の肺の画像そのものやったで」

授業で習った? A君の友人Bは医者だった。

『お前、タバコやめんとあかんで』

A君は未成年の頃からタバコを吸っている。すでにタバコとの付き合いは半世紀。A君の斬新な発想はタバコという相棒のおかげ。愚かですが、これが彼の生き様です。

友人Bのありがたい意見に対し、A君は『今更止められるかい』と一言。

A君の友人Bはあたしの友人でもある。Bはあたしに「お前もAにタバコやめるように言ってくれ」という。もちろん言いましたよ。でもねぇ〜、A君は即答拒否。

A君は意見を述べる時、フロイドのように葉巻をくゆらせる。その意見は考えもしない発想をあたしに産む。感動するんや。

ではA君がタバコ止めるとどうなる?

あたしは悪魔に変身する。

「多分Aがタバコを止めると『ぼーーっと普通の人』になる。Aはそんな人生を望むか?」

あたしは『ええやん。吸うとき』 

最低ですね。

あたしはA君の診立てを医者のBに聞いた。

「多分パンコースト腫瘍やな。肺やから転移も早いで。脳にもすぐ転移する。最悪や」          (つづく)

2023.02.20 #54 恩返し2023年02月20日

(前回からの続きです)

以前テレビドラマで「倍返し」という番組がありました。あたしが大好きな堺雅人さんが主演してたドラマで、え〜っと、タイトル何だっけ? 

今回は「恩返し」のお話。

将来は自分の会社を持ちたいとおっしゃるマジメで優秀なエンジニアの彼から

「話を聞いてほしい。意見を聞かせてほしい」という突然の電話がありました。

はいはい、いいっすよ。でも、あたしの意見を理解するには相当アタマが柔らかくないと、わかんないよ。ではではまいります。

[ 相談内容 ]
体調が悪化し在宅勤務をさせてもらってる。他の人の半分も業務がこなせてないのに給料は下がらず会社の足を引っ張っている。このまま会社に迷惑をかけたまま在籍していいのだろうか。

それとも早く元気になって社長に恩返しをしてからやめるべきなのか。将来は同じ業種なので円満退職したい。

[ 結論 ]
(1)会社は辞める必要はない。
(2)恩返しは雇われている間では不可能。

(1)は前回述べました。
今回は(2)について、あたしの意見。

社長が君に支払っているお金は「社長の投資や」とゆうたやろ? 
そして投資は消費とちがって「必ず回収せんとあかん」

社長の役目は人やモノへの投資や。皿洗いのアルバイト学生に給料として支払うお金とか、皿洗いに使う洗剤の代金、洗剤を流す水道代、これら全部が投資。

社内の人やモノやコトに対するお金の流れは、すべて回収を目的とする役割を担ってる。

「え? 人件費や洗剤や水道代も投資?」
「そうや。経理上は違うけど、結局は投資」

君が元気になって会社に10億円の利益をもたらしても経営というシビアな世界では社長が君への投資に成功しただけ。

社長にとっては君の恩返しでも、何でもない。

雇用関係が成立してる間は、社長は投資の結果としか考えへんし、また、そうやないと会社は潰れる。

では、どうやったら恩返しが出来るか。

コレ、簡単そうで難しいんや。それはな・・・

※困っている人を助けることや。そして、それは社長やなくてもいい。 (了)

2023.02.06 #53 お悩み相談2023年02月06日

(前回からの続きです)

試合中(診察時間内)に、突然かかってきた彼からの電話。

「なぁ〜、そー爺ぃ、ハナシ聞いてくれる? 意見聞かせて」

彼は20代の優秀なプログラマー。どの会社に応募しても即採用が決まる能力の持ち主で、転職ごとに給与は上がってきた。将来は自分の会社を作ることを考えている。

相談内容

体調が悪化し在宅勤務をさせてもらってる。他の人の半分も業務がこなせてないのに給料は下がらず会社の足を引っ張っている。このまま会社に迷惑をかけたまま在籍していいのだろうか。

それとも早く元気になって社長に恩返しをしてからやめるべきなのか。将来は同じ業種なので円満退職したい。

結論:(1)会社を辞める必要はない。
   (2)恩返しは雇われている間では不可能。

まずは、あたしの意見(1)について

社長が何を考えてるかはわからんけど、経営者は必ず投資にお金を使う。必ずやで。

お金の使い方には二つあって、一つは消費。もう一つは投資。

消費は使って終わりや。一方、投資は使ったお金を回収することに力点がある。

例えばスマホ買って楽しんでるだけは消費やけど、スマホ使ってスマホ代より儲けたらスマホ代金は投資ってわけや。

経営者は使ったお金が、どう会社に利益をもたらすかを常に考える。

例えば「皿洗いのアルバイト学生に使った給与は会社にどれだけの利益をもたらすか」やね。

さて、将来経営者になりたい君やからゆうとくで。今の給料は労働の対価としてもらってると思てるやろ。これは雇われている人の論理や。社長はそんなこと考えてない。

君に払ってるお金は投資や。

「この投資は間違いない!」

と思てお金を使ってる。年間1,000万円給料支払っても、倍以上回収できると考えたから君に支払っとる。

雇われた人の論理と経営者の論理は根本的に違う。この論理の相違は嫁姑(よめ しゅうとめ)問題みたいに永遠の課題や。

この点がわかったら、君が会社に在籍しててもいいかどうかなんて、悩むのは君やなく社長やろ? 君が悩むことやないわな。

余計なこと考えんと、おれるだけ、ずっと、おったらよろし。 

(つづく)