#61 ワクワクの放射線治療2023年05月29日

(前回からの続きです。当院運営顧問のA君のお話)

肺癌ステージ4、余命5ヶ月のA君から電話がありました。今回も上機嫌。

『どうしたん?』

A君
「聞いてや。今度、放射線の治療うけることになってん」

あたし
「え? 放射線使ったら間質性肺炎が悪化して1ヶ月で死ぬから出来ないってゆうてたやん」

A君
「確かにそうや。肺には使われへん。転移した仙骨の癌に使うんや。さっき、放射線医師のレク(説明)受けて来てん。それがや、その放射線の機械、むっちゃカッコええねん。あれ受けたら、どんな感じするんやろ。ワクワクやで」

あたし
「ずっと黙ってたけど、お前、癌やねんで! 余命5ヶ月やねんで! ええかげんにしなさい。思考が狂ってるぞ。まさか癌は脳にも転移しとるんか!」

A君
「そやねん。その放射線の機械な、脳に転移した癌もプシューってピンポイントで狙うそうや。むっちゃカッコええと思わへん?」

あかん。コイツあたしの言った意味がわかってへん。

昔A君と東京のお台場に行った時、高さ18メートルのガンダムを見て

『むっちゃ、カッコええやん。ワクワクやで』

と、はしゃいでその場を離れず、会合に遅刻したことを思い出した。今の彼は気に入ったおもちゃを買ってもらった子供みたい。

A君
「聞いて、聞いて。10日連続でやるんやて。10日やで、10日!」

このお手紙を読んだ殆どの方は『余命5ヶ月と宣告され、その恐怖から逃れたい一心で ”ワクワク” なんて無理に強がってるのだろうな、かわいそうに』と思うでしょう。

以前申しました。A君は幼稚園からの友人。彼は心から “はしゃいで” いる。彼に当院の運営顧問をお願いしたのは、プラス思考という机上論の誤魔化しでなく『達観』してるから。

あたしの人生の難問に数々の意見をくれ、乗り切ってこれたのも彼のおかげ。

あたし
「ほんで、癌はどうなるの?」

A君
「ま、なんとかなるやろ」

・・・・・・・・・・『 マ ナントカ ナルヤロ 』

このA君の口癖に、

あたしはずっと救われてきたのですけど・・・・・・(つづく)

--------------------------------------------------------------------------------

60年前の幼少期、母親と幼稚園の見学に行き、あたしのすぐそばで

「あの滑り台、大きくてワクワクや!」

と大声で叫んでたA君を思い出しました。

次回のお手紙は6/12予定。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://geeg.asablo.jp/blog/2023/05/29/9589700/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。